今月の本
What Could Be Saved
アメリカ人の作者が子供の頃、タイに在住した経験をもとに書いた小説である。無駄のない美しい英文を使って、ある家族の歴史を語っている。言葉を豊かに使って状況や人の気持ちを緻密に描写しているため、1972年のタイと2019年のワシントンD.C.の場面が代わる代わる登場しても、混乱なく、内容にすっと入っていける。物語の最後になって、タイトルのWhat could be savedが何を指しているのかがわかるような仕掛けになっている。作者は救急医だったらしいが、彼女の豊かな感性と深い知性を感じる作品である。
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