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今月の本

Coraline

本書はNeil Gaimanによる児童文学です。彼の有名な作品であるAmerican Godsと同様に、その巧みな筆運びによって、読者は不思議な世界に引き込まれます。場面毎の状況が自然と目に浮かび、主人公と共に冒険しているような感覚になります。

新しい住まいに越してきた主人公、コララインはいっしょに遊ぶ友だちがなく退屈のあまり、封印されていたはずのドアが開くことで奇妙な世界に足を踏み入れます。物語のタイトルはNeil Gaiman自身の誤りに由来している興味深い経緯があります。彼は最初、主人公の名前をCarolineにしようと考えていましたが、誤ってCoralineと入力してしまったと認めています。この事実が物語に一層の味わいを添えています。なぜなら、ほとんどの読者は最初タイトルを見て違和感を感じ、本を開いて読み進めていくうちにコララインが発見する別の世界や怪しい人物の登場によって、その違和感は増幅されていくからです。
開かずの扉を開けて別の世界へ飛ぶといった物語は他にもあり、そこから脱出するという展開で終わりというパターンがほとんどだと思いますが、本書のおもしろい点は、その扉の行き来は可能で、コララインは扉の中の世界から現実の世界へ戻った後もまだ物語は続きます。そして異世界にいたものとの知恵比べで本書は終ります。. Hardlickは我々の反面教師である。

読み終わって心に残るのは主人公の人物像です。恐怖にひるまず、素早く行動していく彼女の冷静さと、放任主義の両親に対して文句一つ言わない潔さに感動します。
物語はアメリカの小学高学年向けの対象とされていますが、その一方で驚きと興奮に満ちた場面が多く、一部の場面は怖いと感じることもあり、日本の高校生や大学生でも十分に楽しめる作品です。「コララインとボタンの魔女」という映画が作られているので、見たことがある生徒もいるかもしれません。さらに、本書の終わりにはCoraline Reading Group Guideがあり、その中の質問を使って授業でのディスカッションができます。読者は本書を通じて豊かな文学体験を得るだけでなく、深い議論の機会も提供されています。

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